本稿では、SEM(走査型電子顕微鏡)やラマン分光測定装置を組み合わせた分子レベルでの引張試験について解説します。
一般的な引張試験は、万能試験機と呼ばれる装置を用いて行われます。この試験では、金属やプラスチックなどの材料に引張力を加え、破壊に至るまでの挙動を観察します。通常、JIS(日本産業規格)などで規定された数十センチ程度の試験片が使用されます。万能試験機を用いた引張試験の詳細については、他の別サイトをご参照ください。

万能試験機を使った引張試験について詳しい情報は、別のサイトをご覧ください。
注目される小型引張ステージ
小型引張ステージ開発の経緯
引張試験では、試験片に荷重を加えることで、弾性変形、塑性変形、破断に至る過程を観察します。

万能試験機を使った引張試験について詳しい情報は、別のサイトをご覧ください。

近年、材料の分子レベルや光学特性の研究ニーズが高まる中、光学顕微鏡やSEM、ラマン分光測定装置、DIC装置、偏光測定装置などを活用した観察が求められています。これらの装置では、静的な状態での測定が主流ですが、動的変化を捉えるためには小型引張ステージとの組み合わせが不可欠です。
そこで開発されたのが、光学顕微鏡やSEMなどの計測機器に搭載可能な小型引張ステージです。
小型引張ステージは、In-Situ観察用ステージやその場観察用引張試験機とも呼ばれ、試料の分子レベルでの挙動をリアルタイムに観察・測定することが可能とし、材料研究の新たな可能性を拓くツールとして注目されています。

小型引張ステージの事例
小型引張ステージは、さまざまな材料の微小領域での力学特性評価に活用されています。
以下に代表的な事例を紹介します。
- 金属:ステンレス鋼のミクロスケールでの疲労損傷挙動をSEMで解析し、微小なひび割れの発生や進展過程を明らかにします。
- 炭素繊維:ラマン分光法を用いて、応力集中や損傷箇所を解析し、繊維内部の応力分布や分子構造変化を特定します。
- 全固体電池:SEMを使用し、バインダーや固体電解質の圧縮力下での挙動を観察し、性能劣化につながる微小な構造変化を特定します。
- PETフィルム:ラマン分光法による解析で、引張を負荷した時の分子構造変化を解析し、フィルムの強度や耐久性に影響を与える要因を明らかにします。
小型引張ステージについて
代表的な小型引張ステージついて解説します。

光学顕微鏡に、小型引張ステージを搭載した写真です。SEMやラマン分光測定装置など、さまざまな装置と組み合わせて使用することができます。
小型引張ステージは、以下の3つの主要部品で構成されています。
① 小型引張ステージ本体
– ロードセルと引張治具で試験片を固定
– モーター駆動による試験片の引張
– ひずみゲージを用いた試験片の変形測定
② コントローラ
– モーター制御で引張力を調整
– ひずみデータを収集し、パソコンへ送信
③ 操作パソコン
– 試験条件の設定、結果の表示・保存

小型引張ステージ
ロードセルに内蔵されたひずみゲージは、試験片のひずみを電気信号として検出します。ひずみとは、試験片に加わる外力に応じて生じる材料の伸縮量を指します。この引張ステージでは、試験片が引っ張られると、その伸びた量がひずみ量として測定されます。
ひずみゲージは、試験片のわずかな伸縮を正確に捉え、その変化量を電気信号に変換することで、試料の力学的特性を評価します。

顕微領域での引張試験
顕微領域での引張試験
小型引張ステージと光学顕微鏡、ハイスピードカメラを組み合わせた引張試験では、顕微領域での材料変化をリアルタイムに測定・観察できます。

ハイスピードカメラによるひずみ解析
ハイスピードカメラを搭載した観察顕微鏡を用いて、機能性フィルムのひずみ解析を行った事例を紹介します。
① 中央上部でのひずみ発生

試験の初期段階で、中央上部にひずみが発生しました。赤色で表示された部分が、ひずみの発生箇所です。
② ひずみの広がりと小さな切断の確認

引張応力を継続して負荷すると、ひずみの範囲が拡大し、切断(黒色で示された部分)が生じたことが確認されました。
③ 大きな切断の発生

ひずみと切断が縦方向に広がり、目視でも切断が確認できました。
この試験では、目視では捉えきれない微細なひずみや切断が、どの程度の引張荷重で発生するかを評価しました。顕微領域での材料の変化を詳細に観察することで、製品の不具合を事前に防ぐための重要な手法として高く評価されています。
まとめ
各種顕微鏡と小型引張ステージISLシリーズを活用することで、顕微領域での素材変化をリアルタイムで観察でき、新たな素材開発への応用が可能となります。
小型引張ステージISLシリーズは、SEM、レーザー顕微鏡、デジタルマイクロスコープなどとの組み合わせにより、引張試験中の試験片の分子レベルや光学特性など微細変化を高精度で測定・観察できます。全固体電池や炭素繊維など、さまざまな素材の研究開発において重要な役割を果たしています。
光学顕微鏡以外での活用事例については、下記のリンクより事例集をご覧ください。
