新型コロナウイルスの流行に伴って、接触せずに体温を測れる体温計のニーズが高まっています。
実は、これと似たものとして非接触温度計というものが存在します。
これは非接触体温計とどう違うのでしょうか。
使い方や使い道も含めて解説していきます。
非接触温度計とは
私たちの生活の中では時にさまざまなものの温度を測る場面があるでしょう。
お湯の温度を測ったり、気温を測ったりと温度計を使う場面は少なくありません。
基本的に温度計は水の中に直接入れることで測るものです。
しかしながら、物によっては測れる温度の限界を超え、逆に温度計が壊れてしまうものもあります。
冷たすぎる液体窒素だったり、熱すぎる溶けたアルミだったりはその代表と言えるでしょう。
そういったものの温度を測るために、非接触温度計は開発されました。
非接触温度計はどのように温度を測っている?
では、物に触れることなく温度をどのように測ることができるのでしょうか。
地球上に存在するありとあらゆるものは、すべて赤外線を放っています。
赤外線というとヒーターに使われたり、オーブントースターに使われたりしていますが、実は人間も赤外線を放っているのです。
とはいえ、こうした赤外線は肉眼では見ることができません。
赤外線を計測するためには、専用の機器を準備しなくてはいけません。
赤外線は温度が高ければ高いほど波長が短くなり、一方で温度が低ければ低いほど波長が長くなる傾向があります。
これをもとに、サーモバイルという計測装置を使って赤外線の波長の長さを測れば、物の温度がどのくらいあるかを測ることができるのです。
ちなみに、テレビなどでは体の部位別の温度を測るサーモグラフィー(熱画像)の映像が流されることがあります。
あれもまた赤外線を感知したセンサーからの信号を映像に変換しているのです。
非接触温度計の使い方
エー・アンド・デイの「レーザーマーカー付き赤外線放射温度計 AD-5614」を参考に、使い方をご紹介いたします。
基本的には「測定対象物に向けてスイッチを押す」という使い方で、とても簡単です。
エー・アンド・デイ レーザーマーカー付き赤外線放射温度計 AD-5614
特徴
- PS/Cマーク(JQA)認定製品
- バックライト、レーザーマーカー付き
- 放射率設定変更可能
- 上限/下限温度アラーム機能付き
- 別売のKタイプ熱電対温度センサー(※1)使用可能
- オートパワーオフ機能付き
操作方法
- 温度測定(放射赤外線センサ) 本器の温度測定部(対物レンズ)を測定対象物に向けます。
- [温度測定]スイッチを押すと、液晶表示部(下部)に測定温度が表示されます。
補足ポイント
- [温度測定]スイッチを押しながら[レーザー光 ON/OFF]ボタンを押すと、レーザー照射部より赤色のレーザー光線が照射されます。
- [温度測定]スイッチを押している間は約 0.5 秒間隔で測定温度表示を更新し続けます。
- [温度測定]スイッチから手を離すと測定温度がホールドされます。
- 正確な温度測定を行うには[温度測定]スイッチを 1 秒以上押し続けてください。
- [温度測定]スイッチを押している時間が 短いと正しく温度測定できません。
- 本器のセンサ応答時間は 1 秒以上です。
注意点
- レーザーを人や動物の目や顔に向けないでください。
- レーザ ー光線を直接照射されると目を傷める場合があります。
- 鏡やガラスなどを反射したレーザー光線も同様です。
- レー ザー光線は何百メートル先にも届きますので、視野の線上に誰もいないことを確認してください。
非接触温度計の使い道は?
では、非接触温度計はどういった場面で使えば良いのでしょうか。
まず、人間の手などでは触れないものの温度を測るために非接触温度計はうってつけです。
たとえば、アルミ製品の製造過程で温度の管理をする時などにはぜひ使用すべきでしょう。
アルミニウムは、冷えるとともに固まるため人間が素手で触れようとするのは危険です。
当然、温度計などで温度を測るわけにもいきません。
一方で、品質の良いアルミ製品を作るためには適温を常にキープしておく必要があります。
アルミニウムが冷えていないか、あるいは温まりすぎていないか、といったことを確認しながら製造する必要があるでしょう。
そうした管理を逐一行うためにも非接触温度計は欠かせません。
これと同じように、金属を溶かしたり樹脂を溶かしたりなどといった場面でも非接触温度計は活躍してくれるはずです。
接触せずに温度を測れるから衛生が気になる場面でも使える
そのほかの使い道としては、食品加工工場が挙げられるでしょう。
もちろん、油の温度を測ったり、鉄板の温度を測ったりといった場面でも非接触温度計は使えます。
金属や生コンクリートなどと同様、食品もまた適切な温度管理をする必要があるのは変わりません。
しかしながらそれ以上に、非接触ならではのメリットがあることも忘れてはいけません。
温度計をいかに清潔に保っていようと、やはり衛生上のリスクは避けられないでしょう。
その点、非接触温度計ならば食品に直接触れることはありません。
食品を清潔に保ったまま温度を測れるので、清潔なまま食品を出荷することができるのです。
非接触温度計と体温計の違いは?
非接触温度計はしばしば、非接触体温計と混同されがちです。
新型コロナウイルスが流行したので、非接触体温計を入荷したと思ったら、温度計を入荷してしまったというケースも少なくありません。
では、温度計と体温計はどう違うのでしょうか。
まず両方のメカニズムは変わりません。
非接触温度計は赤外線をもとに温度を測定しますが、これは体温計と同様です。
一番の違いは、測定できる温度が挙げられるでしょう。
非接触温度計
非接触温度計は工場などで使われることが多いので、幅広い温度をカバーしています。
低いものだと-50℃、高いものだと1,000℃以上のものを計れる計測器も存在するのです。
非接触体温計
一方で、体温計はあくまでも人体の熱を測る装置にすぎません。
それゆえ、最低温度は30℃、最高温度は45℃程度に設定されているものがほとんどです。
もちろん、非接触温度計でも人体の温度は測れないわけではありません。
しかしながら、人体のために設計されたものではありませんから、できれば体温計のほうを使うようにしましょう。
非接触温度計はどのように選べばいいのか
非接触温度計の知識についてあらかた学んだところで、実際に温度計を購入してみましょう。
温度計を選ぶうえで重要なのは、どれが一番良い温度計かを見極めるのではなく、そもそも何をするために温度計を買うかをあらかじめ決めておくことです。
店で売っているものの中で一番品質が良いものを買ったはいいものの、自社で使う用途とは噛み合わなかった、となってしまっては意味がありません。
そうではなく、使い道を決めたうえで、それに見合った商品がないかと探したほうが有益な買い物ができます。
放射率への対応
まず注目したいのは、非接触温度計がさまざまな放射率に対応しているかどうかです。
再三述べてきたように、非接触温度計は物の赤外線をもとに温度を測りますが、赤外線が放射される割合は物によって異なります。
たとえば、ゴムなどは放射率が高い一方で、金属などは放射率が低い傾向にあるのです。
これに対して、非接触温度計の設定を変えないまま使うと、温度が正確に測れません。
そのため、非接触温度計の放射率の設定を変えながら物の温度を測る必要があるのです。
放射率は物によってまちまちなので、できれば細かく放射率を変えられる温度計を買うのが望ましいでしょう。
温度計によっては、説明書などに物の放射率の一覧が掲載されている場合もあります。
とはいえ、うちはこれにしか非接触温度計を使わないという場合なら、特定の放射率に対応している温度計さえ購入すれば問題ありません。
非接触温度計の測定距離や測定範囲も見逃さないでおこう
次に重要なのは非接触温度計の測定距離です。
測定距離
そもそも非接触温度計が使われる場面は、計測対象になかなか近づけないという時でしょう。
ならば、遠くからでも測れる非接触温度計を買うに越したことはありません。
市販されている非接触温度計の測定距離は、10:1といった表記がなされるのが一般的です。
これは10mの距離に対して直径10cmの範囲を測定する、という意味です。
表記法をあらかじめしっかりと学んだうえで製品を選ぶようにしましょう。
測定できる温度の範囲
そのほか、測定できる温度の範囲もチェックしたほうが良いです。
よくわからないまま非接触温度計を買ってみたけど、測りたいものの温度に対応していなかった、というケースは避けなければいけません。
市販されている非接触温度計はすべて測定範囲を掲載しているものばかりですので、忘れずに見るようにしましょう。
測定分解能
また、測定分解能というものも存在します。
一般的な温度計は小数第一位の温度までしか測れません。
しかし、非接触温度計によっては小数第二位や小数第三位まで測れるものも存在します。
まとめ
非接触温度計はさまざまなシーンで使える製品です。
これまでの仕事を、よりクオリティ高く仕上げることができる製品であり、これまでできなかった仕事を可能にしてくれる製品でもあります。
また、手軽に使えてすぐに温度が測れるというメリットもあります。
購入を検討されている方は、ぜひ現場などで取り入れてみてください。