物の寸法を測る時には、メジャーや定規などの測定工具が使われるのが一般的です。
しかし、製造業において0.1mm、0.01mm単位での精度が必要となるものでは、十分な精度とは言えません。
マイクロメーターは、簡単な構造でありながら0.01mm単位まで正確な測定ができる測定工具であり、高い品質の求められる製造業の現場では幅広く使われています。
ここでは、マイクロメーターの構造や種類、他の測定工具とどのような違いがあるのかといったことについて詳しく見ていきます。
マイクロメーターの特徴
まずはマイクロメーターの特徴を見ていきましょう。
マイクロメーターとは
マイクロメーターは対象物を挟み込むことで物の寸法を正確に測定することができる工具です。
一般的なマイクロメーターの場合は0.01mmが測定可能な最小単位となっています。
最近ではミツトヨの「MDH-25MB」のように0.001mmまで測定することが可能な機種も登場しています。
マイクロメーターが寸法を高い精度で測定できるのは「アッベの原理」を利用しているからです。
アッベの原理とは、物を測定する時に誤差を最も小さくする手法のことです。
具体的には「測定する対象物と測定器の目盛りを同一直線上に配置する」というものです。
マイクロメーターの場合は、固定軸の基準線と平行に目盛りが設定してあるため、ほかの測定工具と比べても正確な測定が可能になります。
おすすめのマイクロメーター
ミツトヨ 単体形デプスマイクロメータ DMS 128-103
特長
- スピンドルの直径:φ4mm
- クランプ付き
- 測定面超硬合金チップ付き
- 定圧装置付き
仕様
符 号 | DMS60-25W |
---|---|
コードNo. | 128-103 |
測定長 | 0〜25mm |
最小表示量 | 0.01mm |
ベース面寸法 | 63.5×16mm |
ノギスとの構造的な違い
物の寸法を測る測定工具としてマイクロメーターとよく似たものにノギスがあります。
ノギスは本尺からジョウやクチバシと呼ばれる部分が出ていて、このジョウやクチバシなどで対象物の寸法を測定することができる工具です。
製造業の現場ではより正確な寸法を測定するため副尺(バーニヤ目盛)があるものを使用します。
マイクロメーターもノギスも「対象物を挟むことで寸法を測定する工具」という点では同じですが、実はそれぞれの用途は異なります。
ノギス
ノギスの場合はジョウと呼ばれる部分を使って、対象物を挟んで厚みや幅を測定することができます。
クチバシという部分を使えば穴の内径を測定することも可能です。
デプスバーという部分を使えば穴の深さも測定することもできます。
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マイクロメーター
一方、マイクロメーターの場合は対象物を挟むことしかできないので、寸法といっても厚みしか測定することができません。
「それならばマイクロメーターなど使わずにすべてノギスを使って寸法を測定すれば良いのではないか」という人もいるかも知れません。
しかし、ノギスは対象物と目盛りを同一線上に配置して測定することができないため、アッベの原理が使えず、マイクロメーターに比べると測定の精度が劣るという欠点があります。
そのため、高い精度が必要とされる現場ではマイクロメーターという測定工具は、欠かすことのできないものなのです。
マイクロメーターの使い方
では次にマイクロメーターの使い方を紹介していきます。
測定方法
マイクロメーターにはいくつかの種類がありますが、一般的にマイクロメーターとは「外側マイクロメーター」を指すことが多いので、ここでは外側マイクロメーターについて説明します。
マイクロメーターで対象物を測定する時にはスピンドルとアンビルで対象物の両端を挟むようにし、垂直方向に目盛りが書かれているシンブルを回転させて軽く固定します。
次にマイクロメーターの先端部分にあるラチェットストップを回して、空回りするまでスピンドルとアンビルを締め込めば測定作業は終了です。
目盛りの読み方
マイクロメーターには、スリーブに1mm単位の目盛り(主目盛)、シンブルに0.01mm単位の目盛りの、2つの目盛りが書かれています。
対象物の寸法はこの2つの目盛りから読み取ることができます。
例
たとえば、スリーブの目盛りが13と14の間にあり、シンブルの目盛りが18であったとしましょう。
この場合、まずスリーブの目盛りから寸法は13mmと14mmの間であることがわかります。
次にシンブルの目盛りから1mm以下は0.18mmであることがわかるので、この両者から対象物の寸法は13.18mmであることがわかるのです。
測定時に注意する点
続いて、測定をする際に注意する点をを見ていきましょう。
測定面を平行に保つ
マイクロメーターは、スピンドルとアンビルで対象物を挟んで寸法を測定します。
長年使い続けていると、摩擦などによって表面が削れて平行でなくなってしまうことがあります。
少なくとも1年に1回、可能であれば3ヶ月に1回ほどの頻度で平行が保たれているかをチェックしましょう。
この作業を校正と言います。
校正は専用のブロックゲージを使って行い、ブロックゲージの寸法と測定結果にズレがある場合は調整が必要になります。
ゼロ点修正を行う
スピンドルとアンビルの表面に汚れが付着していると測定結果に狂いが出てしまうので、測定面を常にきれいに保つことも重要です。
もしもゴミなどが混入してしまうと、基準点(ゼロ点)がずれてしまって、正確な測定ができなくなってしまうことがあります。
測定の前にはゼロ点調整を行うようにしましょう。
熱膨張
対象物が金属の場合、熱の影響によって寸法が変わってしまうことがあります。
測定時に素手で対象物を触ってしまうと、熱膨張してしまうことがあります。
熱が伝わらないように断熱性能のある手袋などを使用すると、測定結果の精度を高めることができるでしょう。
マイクロメーターの種類
次にマイクロメーターの種類を見ていきましょう。
対象物によって使用すべき種類が変わりますので、気を付けましょう。
外側マイクロメーター
対象物の外径を測定するのに用いられます。
対象物の形状によっていくつかのタイプに分類することができます。
標準マイクロメーター
円形の対象物を挟んで、外形の寸法を測定するのに適したタイプです。
筒状の製品を製造する現場などで多く使われます。
U字型マイクロメーター
標準マイクロメーターと比べて、フレーム部分の奥行きが大きく取られているタイプです。
奥行きがあることで鉄板などを深く差し込むことができるため、板厚の測定に使われます。
球面マイクロメーター
一般的なマイクロメーターではスピンドルとアンビルの表面は平面ですが、このタイプではスピンドルとアンビルの両方とも表面が球状になっています。
これによってピンポイントで寸法を測定することができるため、場所によって厚さの異なる対象物を測定する時に便利です。
内側マイクロメーター
パイプ状の対象物の内径を測定することができるマイクロメーターです。
棒型内側マイクロメーター
外側マイクロメーターのようにフレーム部分がなく、一本の棒のような形状をしているためこのように呼ばれます。
ロッドを継ぎ足すことで、ある程度大きな対象物であっても内径を測定することができます。
一方であまり小さな対象物の場合は向きません。
3点式内側マイクロメーター
棒型のマイクロメーターは2点での計測ですが、このタイプは3点で計測するため、より正確な計測が可能となっています。
また、計測点が増えることで内径の変形などにも気付きやすいのが特徴です。
デプスマイクロメーター
溝の深さや段差などを測定することができるタイプです。
長さの異なるロッドに交換することで、より広範囲の測定にも対応できるようになっています。
ねじマイクロメーター
ねじの有効径を測定することに特化したマイクローメーターです。
ねじの有効径とは、ねじ溝の幅とねじ山の幅が同じになる仮想的な直径のことです。
この径が正しくないと、雄ねじよりも雌ねじが小さくなるなど、ねじとして十分に機能しなくなってしまいます。
歯厚マイクロメーター
歯車は形状が複雑で3次元的な要素も多いことから、歯厚を1枚ずつ測定するのは非常に難しい作業になります。
そこで、歯厚の測定専用に使われるのが歯厚マイクロメーターです。
歯厚マイクロメーターでは歯車を複数枚挟んで計測してする「またぎ歯厚」という寸法が用いられます。
まとめ
マイクロメーターは、アッベの原理を利用することで0.01mm単位で正確な寸法を測定することができる工具です。
日頃からメンテナンスを行って、高い精度のまま使うように心がけましょう。
マイクロメーターは外側タイプのものがよく知られていますが、種類によって外側タイプでは測定できない箇所も正確に測定ができます。
用途や形状に応じた種類のマイクロメーターを使用して、精度の高い数値を把握することは、製品の品質の向上にもつながるでしょう。