地球温暖化が世界的な問題となってから久しいです。
真夏の猛暑をはじめ、春先から夏日になるなどの異常気象が発生しています。
大型台風や豪雨などの災害も増え、世界各地でもハリケーンや竜巻、山火事などによる大災害や被害が相次いでいます。
海面上昇により、島の一部が浸水して住むことができなくなるなど、恐れていた自体も現実化してきました。
二酸化炭素の排出量を抑えないと大変なことになる状況ですが、実際の生活や経済活動の中でCO2削減を行うのはなかなか難しいのが現実です。
こうした現状を打開すべく、京大スタートアップにおいて窓ガラスを発電させるという再生可能エネルギーの技術開発が進められています。
日本におけるCO2排出量の現実と、実用化が期待されている赤外光(赤外線)に注目した窓ガラス発電について見ていきましょう。
事務所・ビルのCO2削減が必至
2020年度における日本全体のCO2排出量は約10億4,400万トンでした。
その内訳を示す日本の部門別二酸化炭素排出量の割合の調査データによれば、最も大きな割合を占めるのは工場などの産業部門で34.0%、続いてトラックなど輸送を行う運輸部門が17.7%です。
続いて、ビルなどの業務その他部門は17.4%、家庭部門は15.9%となりました。
業務その他部門とは、事務所・ビルをはじめ、デパートやホテル・旅館、劇場・娯楽場、学校、病院、卸・小売業、飲食店、福祉施設などのサービス9業種が含まれています。
業務その他部門の9業種のうちでは、事務所・ビルからのCO2排出量が最も多くなっています。
事務所・ビルのCO2排出量削減を目指す取り組み
では、事務所やビルにおいてCO2排出量を減らすにはどうすれば良いのでしょうか。
エアコンの省エネ設定、照明設備のLED化、DX推進による紙の削減などカーボンニュートラルの取り組み、緑のカーテンの設置、ビルの屋上緑化や太陽光発電など、さまざまな対策が講じられています。
大規模なオフィスビルや大型商業施設では、屋上に設置した太陽光パネルやオフィスや店舗などから出た廃棄物を利用したバイオマス発電などにより、ビルや施設で利用する電力の一部を再生可能エネルギーで賄うという取り組みがなされています。
事務所やビルで利用する電力を、その施設での自家発電で賄うことができれば、かなりのCO2排出量削減効果が期待できるでしょう。
もっとも、超高層ビルなど大規模な高層建物になるほど、必要な電気使用量に対して、屋上の面積が小さく、ビル全体を賄うような発電は期待できません。
そこで注目されているのが窓ガラス発電です。
窓ガラスはビルの1階から最上階まで、ビルの全面に取り付けられています。
屋上に比べると、圧倒的な面積を占めるので、窓ガラスを利用して発電ができれば、発電量は飛躍的に伸びることが期待できます。
実際に、壁面ガラスに太陽電池パネルを採用した事例があるのをご存知でしょうか。
太陽光が透過するシースルー太陽電池パネルと呼ばれる、薄膜多接合シリコン太陽電池を日当たりが期待できる、ビルの南側と東側全体に設置する試みです。
南面に221枚、東面に646枚のシースルー太陽電池パネルを設置し、最大出力で40.78kWを発電しています。
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CO2排出量削減のために注目される透明太陽電池とは?
窓ガラスを太陽光パネルにする取り組みは、海外でも行われていますが、国内ではほとんど普及はしていません。
事務所やビルなどの窓ガラスを利用した発電を効率的に行うため、京都ICAP(京都大学イノベーションキャピタル)から出資を受けた京都大学発スタートアップの株式会社OPTMASSでは、赤外光(赤外線)に注目した太陽電池の開発と実用化に向けた取り組みを進めています。
京都大学化学研究所の坂本雅典准教授の研究成果を、実用化しようという取り組みです。
坂本准教授は赤外光(赤外線)に目を向けましたが、従来の太陽電池の発電には用いられることはありませんでした。
なぜかというと、赤外光は可視光線の赤色より波長が長いので、捕集が困難であること、さらにエネルギーが低く、発電向きではないと考えられていたからです。
もっとも、赤外光は太陽光全体における46%程度と半分近くを占めているエネルギー源です。
そのため、少量でもエネルギーを抽出できれば、全体に占める割合は高いので、重要なエネルギー源となると坂本准教授は判断したのでした。
まず、赤外光に応答する光触媒を開発したうえで、先行研究では0.02~0.7%にとどまって断念されていた赤外光のエネルギー変換効率を3.8%まで上昇させています。
坂本准教授が開発した赤外光エネルギー変換技術を応用して、透明太陽電池の開発と普及を目指すのが、京大スタートアップの株式会社OPTMASSです。
透明太陽電池と呼ばれているのは、人の目では見えない赤外光を吸収し、可視光線だけを通すために透明の電池に仕上がっているためです。
国内で初めてビルの窓ガラスに採用された太陽光電池パネルの可視光透過率は10%でしたが、透明太陽電池では70%以上を達成しています。
従来の太陽電池パネルとは異なり、透明なので窓ガラスと同じように使えると考え、高層ビル全体のメガソーラー化を目指し、実用化に向けた開発が進められています。
透明電池を窓ガラスとして採用すると、発電ができるだけでなく、赤外光を吸収して熱線遮蔽材としても機能し、省エネ作用も期待できる点がメリットです。
透明電池の窓ガラスで室内温度の上昇を抑えてエアコンの節電を図り、かつ発電によってビルの電力使用量を少しでも多く賄うことができれば、ダブルでのCO2排出量削減効果が期待できます。
株式会社OPTMASSの中川社長は、2030年の実用化を予定しており、ビルの電力はビルで賄う、都市の電力は都市で賄うという、電力の地産地消を目指しています。
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透明太陽電池の実用化に向けた課題
透明太陽電池の実用化を目指すうえで、課題も残されています。
1つは、エネルギー変換効率です。
赤外光のエネルギー変換効率そのものは、これまでの研究結果である0.02~0.7%に比べれば、3.8%へとアップさせることができています。
ですが、赤外光のエネルギー変換技術を応用した透明太陽電池においては、発電したエネルギーの変換効率は1%程度にとどまっています。
変換効率をいかに高めるかが今後の課題です。
2つ目の課題はコスト面です。
透明太陽電池は実用化されていないので、まだコストは明らかではありません。
ですが、本体の価格に加え、施工費用、メンテナンスコストなども必要です。
発電量に伴う電気代の削減やCO2排出量削減によって得られるメリットとのバランスで、トータルのコスパをいかに、多くのビルで採用できるレベルにまで抑えられるかがカギになるだろう。
日射計なら
三弘 PV日射計 PVSS-03
リーズナブルな価格で手に入れることができると話題の日射計といえばPVSS-03(PV日射計)です。
こちらの日射計は、太陽光パネルを用いた外部電源が不要なシンプルなセンサとなっているのが特徴です。
直流電圧出力0~1[V](※1.0[V]=1.0[kW/ ㎡ ])と出力が比較的大きく、IoTを活用したスマート農業には最適な日射計と言えます。
さらに、アレイ接続を行えば、建材の影の影響を受けることなく正しく日射量を測定することも可能です。
使いやすく安価なアナログ出力付き日射計をお探しの方におすすめです。
まとめ
事務所やビルのCO2排出量は、日本全体の17.4%に及びます。
屋上緑化や屋上発電などさまざまな取り組みをしても、なかなか排出量を抑えられないのが現状です。
太陽光発電を行う場合、高層ビルの屋上面積はビル全体の電気使用量を賄うには、面積が極めて限られています。
ビルの全面を使える窓ガラスで発電ができるようになれば、その発電量は飛躍的に増加できます。
太陽光の約半分の割合を占める赤外光を使った発電ができないかと、京都大学准教授が研究を行いました。
その成果を応用し、京大スタートアップ企業が窓ガラス並みに透明度が高い、透明太陽電池の実用化に向けて取り組んでいます。