ハイトゲージは、工作物の高さを測定するための精密機器です。
機械のパーツや金型・治工具の高さを測定する際に欠かせませんし、けがきをすることも可能です。
基本的な使い方は、定盤と呼ばれる水平台に置いて計測を行うだけですが、計測に狂いが出ないよう、正しい使い方をマスターしましょう。
ここでは初心者にもわかりやすく、ハイトゲージの使い方を解説します。
まずは構造を理解しよう
ハイトゲージにはたくさんのパーツがあります。
製品によっても詳細は異なりますが、細かく見ていくと20パーツ以上あるため、初心者にはなかなか理解しにくいかもしれません。
取扱説明書をじっくり読み込むことは大切ですが、最初に覚えるべき主なパーツは以下の3つです。
- ダイヤルメモリ
- カウンタ
- スクライバー
現在はデジタルで正確に測定値の読み取りができるため、とても便利になりました。
本尺目盛は本体の柱に付いており、上部に本尺を移動する装置があります。
ほかに、けがき工具と一体化したバーニア目盛があります。
これを測定基準となる理想平面、定盤の上にしっかり設置し、スクライバー下面の測定面を工作物にしっかり合わせることで測定するのです。
ハイトゲージには種類がある
ハイトゲージにはさまざまな種類があり、高さの表示方法で分けられています。
初心者であれば、基本的な標準ハイトゲージと呼ばれる種類を使用するのがおすすめです。
本体柱にノギスのようなバーニア目盛(副尺目盛)が入っていて、0.02mmまたは0.05mm単位で測定ができるシンプルな構造です。
現在はすでにデジタルが主流ですが、従来のハイトゲージのように、細かな目盛りを目視で読むタイプを正確に使用するには訓練が必要となります。
見間違いによる計測ミスなどが起きがちなため、初心者はデジタルやダイヤル式のものを使いましょう。
また、計測可能範囲によっても種類が変わるため、工作物の大きさにプラスアルファして、余裕のあるスケールのハイトゲージを用意しておくことも大切です。
サイズは一般的に、150~1,000mmまであります。
ほかの仕様としては、ダイヤルインジケータを取り付けることで、平行度や平面度、真直度も測定できるタイプもあるので覚えておきましょう。
ハイトゲージの使い方をマスターしよう
基本的なハイトゲージの使い方は、とてもシンプルで簡単です。
まずは3つのステップを覚えてください。
絶対測定とは
- ステップ1:定盤にスクライバーを密着させて0点を合わせる
- ステップ2:スクライバーを上げ、工作物の高さにスクライバー下面を当てる
- ステップ3:目盛りを読む
絶対測定のポイントは、最初に必ず定盤にスクライバーを密着させて0を合わせることです。
基準が間違っていては正確な測定はできませんので、確実に行いましょう。
ゴミやほこりがあると正確性を欠きますので、定盤はきれいにしておくことも大切です。
また、スクライバーを工作物に強く当てたり、無理な力を入れたりすると、正確な測定ができません。
目盛りを目視する必要のある場合は、真正面から目線を目盛りと水平にして読む必要があります。
バーニヤ目盛には拡大レンズが付いているものもありますが、正確に測定値を読むことが重要です。
初心者は、スクライバーを工作物に当てるだけでデジタル表示されるデジタルハイトゲージがおすすめです。
比較測定とは
定盤にスクライバーを密着させて0点を取るのが絶対測定ですが、工作物とほかの基準物の高さの差を知りたい場合は、比較測定を行います。
比較測定は、まず基準となる測定物にスクライバーを当てて、それを0点とするのがポイントです。
次にその状態から対象となる工作物を測定し、その差を読み取るのが比較測定です。
こちらもデジタルハイトゲージが便利で、最初に0点を設定すると、次に測定したものとの差を瞬時にデジタル表示してくれます。
たとえば、10mmの基準物を最初に測定して0点設定すると、次に12mmの工作物を測定した時には2mmという表示になります。
まったく同じ高さの工作物を製作したい場合や正確な数値差を付けたい場合などに、比較測定を行うと良いでしょう。
ハイトゲージを正しく使う時のポイント
ハイトゲージは正しく使えば正確な高さを知ることができますが、いくつか注意事項があります。
それぞれ見ていきましょう。
スクライバーの当て方
先ほども触れましたが、スクライバーを工作物に当てる時の測定力はとても大切です。
特に工作物が柔らかいものだったり、弾力性があったり壊れやすいものだったりする場合、微妙な強さ一つで測定値が変わってしまいます。
0点を設定する時や測定する時にも、スクライバーを下げる時にはゆっくりと、静かに密着させてください。
正確に測定するためには、スクライバーを当てる時にもきちんと神経を使いましょう。
目視の仕方
デジタルハイトゲージなら誤りはほぼありませんが、目盛りを目視する場合には目の高さに注意が必要です。
俯瞰や仰角で読んでしまうと誤った数値を取ってしまうため、自分の目が水平な位置にくるよう調整して読む必要があります。
訓練が必要なため、慣れるまでは特に意識してください。
まず測定範囲を確認し、最小目量と精度を確認して全高を確認しましょう。
定盤の水平が重要
ハイトゲージが正確でも、定盤が歪んでいれば正しい計測は不可能です。
定盤は機械加工や測定の基準となる「理想平面」ですので、必ず確保することが測定のうえでの前提となります。
定盤上の工作物もきれいにして、ゴミやほこりのない状態で計測することも大切です。
ハイトゲージの歪みにも注意
ハイトゲージにはたくさんの固定ねじがあり、これらのゆるみが歪みを生み出すことがあります。
普段からしっかりメンテナンスすることも大切ですし、定期的にねじを締め付け、ベストな状態にしておきましょう。
また、スクライバーの使い方が不適切だと、スクライバーが損傷したり、ハイトゲージの柱が歪んだりすることもあります。
使用環境によっては温度で本体が伸縮し、測定結果に影響が出る場合もあります。
ハイトゲージに損傷がないか、温度環境に問題がないかチェックして、ゼロ点が正しい状態で使用することが大切です。
ハイトゲージはけがき作業にも使える
ハイトゲージは高さを測る測定器ですが、そのほかにも水平な罫書き線を引くことに使えます。
ハイトゲージは、言ってみれば「トースカン」に正確な高さ測定機能を持たせたものだからです。
トースカンというのは、台座に垂直に支柱を立て、そこに上下移動する針を取り付けた「けがき工具」の一つです。
けがきというのは、加工するのに必要な線や点の印を加工素材に付ける作業のことですが、トースカンは工作物の垂直面に平行な直線が書けます。
そのため、円柱状の工作物の芯出しをしたり、平行平面を検査したりするのに欠かせませんが、トースカン自体に高さを測定する機能はありません。
ハイトゲージは、トースカンとしても使えるうえに、正確な高さを測ることもできます。
ハイトゲージでけがき作業をする場合は、作業中にスライダーが動いてしまわないよう、しっかり固定ねじを締めましょう。
スクライバーは先が鋭いので罫書き針として使用できますが、取り外しが可能なので、ダイヤルゲージやピックゲージに替えて作業することも可能です。
工作面にダイヤルゲージを当ててから全面にスライドさせれば、測定面のどこが歪んでいるかが簡単にわかるため、簡易的な平面度計測もできます。
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ミツトヨ 標準・簡易形ハイトゲージ H4-20 506-207
特長
- 手に優しくフィットするベースにより、定盤上での移動が楽にできます。
- 本尺の0点合わせに必要な移動部に、ラック機構を採用。本尺の移動とクランプがスピーディにできます。
- スライダ/微動送りの両クランプに、大きなネジを使用し簡単にクランプできます。
- スライダのホールド感が向上しています。
- 長い時間使用しても、目が疲れない大きな本尺目盛数字を採用しています。
仕様
最大測定長(mm):200
最小読取値(mm):0.02
スライダの微動上下量(mm):4
器差(mm):±0.03
サイズ:全高341mm
重量(kg):1.4
まとめ
ハイトゲージを正しく使う方法を紹介しました。
ハイトゲージは初心者でも使いやすく、正しい加工には欠かせないツールです。
また、ノギスやマイクロメーターと同じように、加工に必要な基本測定器具の一つです。
目盛りを正確に目で読み取るには慣れが必要ですが、現在は工作物に当てるだけでデジタル表示されるものが主流なので、初心者はそちらを使うのがおすすめです。
さらに、単に高さを測るだけでなく、罫書きや形状測定など幅広い使い方ができる便利なツールですので、使い方を正しくマスターして、ぜひ活用してください。