ECメーターは、世界中の農業で活躍している測定機器です。
農地の土壌はもちろん、水耕栽培やプランター栽培などでも欠かせないものです。
一般にはあまり知られていないため、どのような機器なのかわからない人も多いでしょう。
ここではECメーターの基本的な知識のほか、おすすめの商品を紹介します。
ECメーターとは
農業に欠かせないECメーターは、土壌や水耕栽培の培養液などを分析するための測定機器です。
世界各地の農業で使われ、より効率的に作物ができるよう、病気や障害を防ぐ目的で活用されています。
ただ、ECメーターのECはElectrical Conductivityの略で、電気伝導度、電気伝導率と訳されます。
電気伝導率は物質の電気の通しやすさを表す数値なので、ちょっと農業とはかけ離れているように感じるのではないでしょうか。
物質が電気を通すかどうかは、その物質に電解質がどれくらい含まれているかで変わります。
電解質は、陽イオン(+)と陰イオン(−)です。
たとえば、純水は電解質がとても少なくEC値も低くなりますが、海水は塩が含まれているため電解質がとても多く、EC値は高くなります。
ECメーターは、このEC値を測れる機器であり、電解質がどれだけ含まれるかを以下の単位で知ることが可能です。
- mS/cm(ミリジーメンス・パー・センチメートル)
- dS/cm(デシジーメンス・パー・センチメートル)
- μS/cm(マイクロジーメンス・パー・センチメートル)
これがなぜ農業に関係するかというと、土や水の中に含まれる肥料分を知ることができるのがその理由です。
ECメーターを活用する目的とは
農業でECメーターを使う目的は、作物を栽培する土壌や水の中に、どれほどの電解質が含まれるかを知ることです。
土壌や水の中の電解質は、作物のための肥料にあたります。
より効率的に作物を栽培するためには、作物に合った量の肥料が土壌や水の中のあることが何より重要です。
肥料は少なくてもいけませんが、多すぎても生理障害が引き起こされうまく育ちません。
肥料過多で根が傷んでしまうと、栄養も水分も吸収できなくなり、作物は枯れてしまうこともあります。
収穫量を増やそうとコストをかけて肥料を施した結果、逆に収穫量が著しく減ってしまうようなことがあっては大損害です。
そのため、世界中の農業の現場では常に土壌や培養液のEC値を把握し、肥料の量をコントロールすることで最適な環境を保っています。
もちろん全体の肥料濃度が把握できても、どのようなバランスで含まれているかまでは把握できません。
あらかじめ綿密な計画を立て、最適な肥料バランスを整えたうえでECメーターを活用することによって、狙い通りの収穫ができることになります。
ECメーターを使った測定方法
ECメーターの詳細な使い方は各製品で異なりますが、基本的な測定方法をまとめておきましょう。
土壌の測定方法は2つあり、1つは上澄み液で測定する方法、もう1つはダイレクトに測定する方法です。
上澄み液測定
以前からの方法で、今も土壌分析などでは信頼性が高いとして採用されています。
ただ土壌の場合水と撹拌する必要があり、多少の手間がかかります。
測定手順は以下の通りです。
- ステップ1:校正液でECメーターを校正
- ステップ2:土1:純水5で60分撹拌し混ぜる
- ステップ3:3分程度静置する
- ステップ4:上澄み液にECメーターを浸ける
校正液というのは、ECメーターのズレがないよう正すための専用液で、市販されています。
伝導率にズレがあっては正しい測定ができませんので、最初にリセットする意味で行いましょう。
土1:純水5は、たとえば土10gに対し純水50mlを加えて溶かし、絶え間なく撹拌して混ぜます。
その後、分離するまで静かに待ち、上澄みのみを使って数値を測ります。
土は乾いた状態のものを用いますが、サラサラになるようあらかじめ細かく砕くのがコツです。
手間も時間もかかりますが、信頼性が高く、より正確に数値を測りたい場合におすすめです。
ダイレクト測定
土壌にECメーターを直接刺して測定する方法です。
測定手順は以下の通りです。
- ステップ1:校正液でECメーターを校正
- ステップ2:測定場所に純水をかけて湿った状態にする
- ステップ3:ECメーターを刺す
- ステップ4:数ヶ所を同様に測定し平均値を出す
まず校正液でECメーターの校正を行いましょう。
次に、乾いた土では正しく測定できないため、純水で測定する場所の土を十分湿らせます。
目安としては、泥だんごができるくらいまで十分に湿らせましょう。
その場所へECメーターを刺し込んで、数値を読み取ります。
基本的な測定はこれでOKなのですが、場所でバラつきが大きく出ます。
複数の箇所で同じことを行い、結果から平均値を計算するのが一般的です。
培養液の測定
土壌ではなく水耕栽培の培養液を測る際には、以下の手順になります。
- ステップ1:校正液でECメーターを校正
- ステップ2:清潔な容器に培養液を採取
- ステップ3:ECメーターを浸す
培養液の測定は簡単で、ECメーターをしっかり浸ければ問題なく測定が可能です。
ただ、培養液を採取する容器は清潔でなければなりません。
余計な物質が混入しないよう、新しいものを使用するのがおすすめです。
ECメーターの選び方
前述した通り、ECメーターには測定の方法によって違いあります。
上澄み液を使った測定は従来の方法ですが、近年では直接刺して使うダイレクトタイプも増えてきました。
やはり60分撹拌しつづけるのはかなり手間と時間がかかりますし、ダイレクトタイプも十分な精度が上がるようになってきたことが理由です。
複数の箇所を測定すれば十分な場合、やはりダイレクトタイプがおすすめです。
価格は、ECメーターの精度の高さによって変わります。
当然精度が高くなればなるほど価格も上がりますので、安いものは1,000円程度からあるのに対し、高いものは10万円を超えるものもあります。
研究機関などであれば高度に正確なデータが求められますが、肥料濃度の目安にするためであれば、1万円前後の価格が十分な成果を発揮してくれるでしょう。
あまりに安価なものは信頼性に欠きますが、精度が高くコストパフォーマンスの良いものを選ぶのがおすすめです。
おすすめのECメーターをご紹介
それではおすすめECメーターを紹介します。
ハンナ ECテスター HI 98304N(DiST4)
商品仕様:EC
測定範囲 0.00〜20.00mS/cm
検出単位 0.01mS/cm精度 @25℃) ±2%F.S.
校正 自動で1点(12.88mS/cmを使用)
手軽に使えるECメーターです。
ポケットサイズのECメーターがリニューアルし、より使いやすくなりました。
画面にEC値と温度を同時に表示可能、日常防水型で電極は汚れにも強いグラファイト製です。
読み取りのタイミングは測定安定マークで知らせてくれるので、間違いない測定ができます。
(DiST3とDiST4は測定範囲が異なります)
電極は本体と一体型なので、交換は必要ありません。
電池残量は10%を切ったタイミングで、画面で知らせてくれるので便利です。
まとめ
ECメーターは、農業において土壌や培養液の肥料状態を把握するために欠かせない測定器です。
より効率的に作物を収穫できるよう、環境のコントロールに活用しましょう。
ダイレクトに使える手軽なメーターを適切に使うことで、さらに品質の高い作物を作れる期待があります。
畑、プランター、水耕栽培など、あらゆるシーンで活躍してくれるでしょう。