ノギスは昔から使われてきた計測器ですが、近年ではこのツールもデジタル化されました。
定規などでは測定しにくい物体の外径や内径を手軽かつ正確に測ることができるため、プロの現場ではもちろんのこと、家庭のDIYでも広く活用されています。
ここでは誰でも簡単にデジタルノギスが使えるように、コツや仕組みを解説します。
デジタルノギスとは
ノギスは精密測定機器であり、昔からモノづくりには欠かせない道具の一つです。
一般的な定規とは異なる特殊な形をしており、クチバシのような形状で挟むことで寸法を計測します。
測れるのは「外側」「内側」「段差」「深さ」で、メインスケールとバーニアスケールという2つの目盛りがあります。
ただ従来では、目盛りを読みとるのは目視であり、せっかく精密な測定ができても、数値に誤りが出ることが問題でした。
そこで、こうしたヒューマンエラーをなくすために登場したのが、より精度が高いデジタルノギスです。
古くは17世紀から歴史のあるアナログノギスですが、物を挟んでアバウトに外寸を知るための道具から、手軽に高精度な測定のできる機器へと発展したと言えるでしょう。
測定結果は瞬時に液晶ディスプレイに表示され、人間が目盛りを読み取る必要はなくなりました。
電池問題もクリアしつつある
デジタルノギスは画期的だと絶賛された一方で、「電池が切れたら測定ができない」という弱点が生まれていたのも事実です。
確かに、アナログノギスなら電池を必要とせず、いつでもどこでも目盛りを読めば測定できます。
デジタルノギスは基本的に電池を必要とするため、コストがかかったり、電池切れの心配が起こったりします。
ただ、こうした弱点を克服するため、近年ではソーラー電池搭載のものや、すぐにPCなどへ数値を送信できるものなども登場し、大きく進化を遂げています。
人気に伴って値段もリーズナブルになってきており、手軽に精度の高い数値を得られることから、プロの現場でも主流になりつつあります。
デジタルノギスの使い方
それでは、デジタルノギスの使い方をまとめていきましょう。
特に難しいことはなく、初めてでもすぐに簡単に使うことができます。
各部名称
デジタルノギスはクチバシのような形をしている部分に「ジョウ」という部位があり、大小2種類があります。
- 大きい(長い)ジョウ・・・外側用ジョウ
- 小さい(短い)ジョウ・・・内側用ジョウ
ジョウに付随する部分に可動式の部品があり、ここに小さなデジタル液晶が付いているのが一般的です。
- 可動部分・・・スライダー、デジタル液晶
本体にはスケールが付いており、「本尺」と言います。
また、スライダーを移動させるとおしりの部分から飛び出てくるのが「デプスバー」です。
使い方
デジタルノギスもアナログノギスと同様に、基本的にはスライダーをスライドさせて対象物に当て、液晶に表示された目盛りを読み取るだけのシンプルな使い方です。
※デジタルノギスにもさまざまなメーカーがあるため、製品ごとに詳細は異なりますので、詳しくは各製品の取扱説明書をご確認ください。
ここでは一般的な仕様を説明します。
ステップ1:電池と原点をセットする
デジタルノギスは電池を必要としますので、きちんとセットされているかを確認してください。
電池をセットして液晶画面が設定状態になったら、外側用ジョウを完全に閉じてください。
原点を決めるボタンはオリジンボタンと呼び、長押しすると「0.00」と数値が表示されます。
ステップ2:ABSかINCか確認する
ABSは絶対値測定、INCは比較測定を意味します。
- 絶対値測定:対象物の寸法を直接測る方法、
- 比較測定 :比較したいものと対象物との差を割り出す方法です。
対象物のサイズを測りたいならABS、すでに測ったものとの差異を知りたいならINCを使用すると便利です。
たとえば、寸法が3mmと決まっている場合、INCを使用すると、対象物が3.1mmの場合には「0.1mm」と表示され、3mmからどれくらい外れているかを測ることができます。
ABSとINCと2つの計測モードが搭載されている場合、測る前にどちらが液晶ディスプレイに表示されているかを確認してください。
ステップ3:実測する
設定が終わったら対象物を実測します。
念のためもう一度ジョウが閉じた状態で0.00であることを液晶ディスプレイで確認し、スライダーをスライドさせて対象物をゆっくり挟んで測定しましょう。
- 内寸を測る場合
対象物の内側に内側用ジョウを差し込み、ゆっくり広げて垂直に押し当て計測します。 - 段差を測る場合
外側用ジョウの左側と、内側用ジョウの左側を段差に当てて計測します。 - 深さを測定する場合
おしりから出てくるデプスバーを底まで入れ、計測します。
※先端がR形状になっているので、底面の形状に合わせてRの向きを工夫しないと正しく計測できません。
※いずれの測定結果もすぐに液晶ディスプレイに表示されます。
0セットなしで測定開始できるデジタルノギス
表示点灯の後、ゼロセットすることなく測定を開始
ORIGIN(原点)スイッチにより絶対原点位置の変更も可能
測定データ出力端子・サムローラ 無し
ミツトヨ 500シリーズABSスーパーキャリパ CD-15APX 500-181-30
段差測定も可能な長尺タイプのデジタルノギス
測定範囲450mmから1000mmの絶対原点を持つ
ABS(絶対)スケール内蔵の長尺タイプのデジタルノギス
段差測定も可能
ミツトヨ 500シリーズ長尺タイプABSデジマチックキャリパ CD-45C 500-500-10
デジタルノギスを正しく使うコツ
デジタルノギスはアナログノギスと同様に、対象物に対してノギスが直角になるように正しく挟むことが重要です。
操作はとてもシンプルなのですが、きちんと挟めていないと正確な数値は測定できません。
特に円筒のものを挟む場合、ノギスが正しく設置されていないと誤った数値になります。
斜めになっていないか、本当に測りたい部分を挟んでいるか軸方向とノギスの角度を確認しましょう。
目盛りの読み取りに関しては、アナログノギスのように神経質になる必要はありません。
アナログノギスでは目盛りを垂直に読み取らないと誤ってしまうため、本尺と副尺の目盛りが一直線になるようにポイントを見極めて測定します。
方向が斜めだと誤った数値を測定してしまうことになりますが、デジタルノギスはこの心配がありません。
また、アナログノギスでは本尺目盛り+副尺目盛りが測定値ですが、デジタルノギスなら自動的に表示されるためミスもありません。
ノギスはデリケートなツール
デジタルノギスに限りませんが、ノギスはデリケートなツールです。
ゴツゴツした形状はしていますがペンチやスパナのような頑丈なツールではなく、ジョウの先端が少しでも歪んだり欠けたりすると、それだけで使い物にならなくなってしまいます。
どうしてもクチバシのような形状をしているので、物を掴んだまま移動させたくなってしまいがちですが、挟むのは計測する際のみで、そっと当てるようにしましょう。
また、汚れや油が付着して正しく計測できなくなる場合もあります。
いつでもきれいな状態で使えるように、メンテナンスも十分に行ってください。
まとめ
デジタルノギスと使い方のコツを紹介しました。
最近ではプロの現場から家庭のDIYまで、アナログノギスではなくデジタルノギスが使われるようになってきました。
一度使うとその便利さから手放せなくなるノギスですが、デリケートなツールですので取り扱いは丁寧に行いましょう。