冷熱衝撃試験(熱衝撃試験)は、試験体を高温・低温にさらし、急な温度変化に対する耐久性を評価する試験です。
近年、自動車部品や電子機器、金属製品、樹脂製品などを対象に重要性が注目されていますが、試験を受けるためには計測機器と計測技術が欠かせません。
こちらでは、試験の内容や機器の説明、衝撃試験の重要性などについて解説します。
冷熱衝撃試験(熱衝撃試験)とは
冷熱衝撃試験(熱衝撃試験)は、急激な温度変化に対し、対象物がどれだけ耐性を持つかを評価する試験です。
高温と低温を短時間に繰り返すことで、試験体は膨張と収縮とを繰り返しますが、この熱ストレスによって与えられる衝撃はとても大きいです。
負荷のかけ方によって、同一素材であっても損傷の起こり方が変化することもあり、単に高温と低温とに交互にさらすだけでは正しい評価を得られない場合もあります。
求める内容によって評価試験を組み立て、正しく実施する技術が必要です。
冷熱衝撃のほかに恒温恒湿サイクル試験などもありますが、物質のストレスには温度だけでなく湿度も大きく影響します。
現実に起こる故障を想定すべき試験
冷熱衝撃試験を実施するにあたり、より強いストレスをかければかけるほど、対象物の評価が上がると考えるのは誤りです。
なぜなら、試験の目的は対象物が組み込まれた最終製品が、実用にあたってどれくらいの持久力を有するかを知ることだからです。
試験体が電子部品であったなら、それが何に使われ、どういった環境で稼働するかを想定し、実際の現場に見合うストレスを鑑みて試験を行う必要があります。
たとえば、冷熱衝撃試験の温度変化設定が実際の現場で起こる温度変化に対してかけ離れている場合、現実に起こる故障リスクが見つけられない可能性があるためです。
どのような試験にしろ、目的に合わせた正しいデータが取れなければ実施する意義が薄れてしまいます。
計測器だけあれば誰でも簡単に正しい試験が行えるわけではないということだけは、しっかり認識しておきましょう。
冷熱衝撃試験の目的とは
冷熱衝撃試験では、試験対象に高温と低温の急激な変化を加え、その衝撃がどのような影響を及ぼすかを観察します。
実際に稼働する現場で起こり得る環境変化プラスαを想定し、試験体がどの程度耐えられるかで評価します。
物質の多くは、温度が上がれば膨張し、温度が下がれば収縮するのが一般的です。
どのくらいの温度で膨張するか物質ごとに異なりますが、膨張する大きさも異なり「膨張率」と呼びます。
試験体が単一材料である場合と、複数材料で構成されている場合とでは膨張率が大きく変わるため、同じ部品であっても素材構成比が変われば耐久性も変わります。
それは、異なる材料がそれぞれ膨張する時に「応力」が生まれるためです。
応力とは、外力を受けた時に物質内部に発生する力であり、物質それぞれの持つ抵抗力です。
1つの部品の中で応力が発生すると、それが蓄積され、内部から破損を起こすリスクが高くなります。
従来部品の材料構成比を変え、それまでより早く壊れてしまった場合、こうした原因が多いと考えられるでしょう。
起こり得るリスクを知るためにも、冷熱衝撃試験は非常に重要です。
試験では短時間で温度変化を繰り返し与え、意図的に応力を発生させることで負荷をかけます。
また、試験体のどの部分に多く負荷がかかるかを細かく観察し、破損につながる部分を見つけることや、製品全体の耐久性を評価することが目的となります。
冷熱衝撃試験はどのようなシーンで採用されているか
冷熱衝撃試験の重要性が高まっている理由は、近年ほとんどの製品に電子部品が組み込まれる時代になったためです。
世界的に大規模な供給不足が叫ばれている半導体などは、スマートフォンやPCなどはもちろんのこと、冷蔵庫や洗濯機といった日常家電にも当たり前のように組み込まれています。
また、自動車や航空機などの制御システム、社会インフラを支える多くの設備にも多くの電子部品が使われています。
こうした大きな社会を支えているのも、一つひとつは小さなデジタル部品です。
安心して暮らせる社会を維持するために回避すべきリスクは非常に大きく、冷熱衝撃試験はこうした一つひとつのデジタル部品に対し、信頼性を担保するのに必須の試験となっています。
実際に冷熱衝撃試験が採用されているのは、半導体のはんだ付け(接合部分)の評価、プリント基板や実装基板の信頼性の評価などです。
また、電子部品のほかにも、金属、プラスチック、樹脂、セラミックスなどの材料で作られたもの、それらがミックスされて構成された材料なども対象です。
もちろんデジタル家電など、製品丸ごとの信頼性や耐久性などの評価にも採用されます。
小さな部品一つから最終製品に至るまで、信頼性を支える試験であることは重要なポイントと言えるでしょう。
三弘の代行試験「SANKO Test Lab」
冷熱衝撃サイクル試験や恒温恒湿サイクル試験を自社で行うのは、時間や労力がかかることでしょう。
そこでご紹介したいのが、株式会社三弘が「お客様の困りごとを一緒に解決していく受託試験事業」として行なっている、代行試験「SANKO Test Lab」です。
SANKO Test Labとは?
求めている試験の内容のヒアリングや打ち合わせを行い、自動車電子部品、航空機搭載機器、半導体、二次電池等の評価試験を、株式会社三弘が代行試験として実施するものです。
現在は、2種類の受託試験を主に行なっています。
- 恒温恒湿サイクル試験
温度変化及び湿度に対する耐性を評価する - 冷熱衝撃サイクル試験
高温と低温を短時間で交互に繰り返す事により、温度変化に伴う膨張と収縮をさせ応力を与える
試験内容の詳細について
試験内容 | 試験名称 |
---|---|
恒温恒湿サイクル試験 | 低温試験・耐寒性試験 高温試験・耐熱性能試験 高温高湿(定常)試験 温湿度サイクル試験 定速温度変化試験 |
冷熱衝撃サイクル試験 | 急速温度変化試験 温度急変試験 |
総合信頼性評価(基板接合劣化評価)
現在の電子部品は小型化・高密度実装型が進んでいるため、使用環境温度変化や構成部品の発熱による温度変化を受けやすくなっています。
また、電子部品の接合部はハンダを使用しているため、構成部材の熱膨張係数差と環境温度変化等により引き起こされた応力が繰り返し加わり、疲労破壊が発生します。
この故障メカニズムを試験期間短縮・コスト低減を目指した信頼性評価技術試験が三弘では行われています。
定速温度変化試験(温度サイクル試験)
高温と低温の雰囲気に部品又は製品を短時間の内に交互にさらす試験です。
温度変化をかけることで膨張と収縮のストレスを繰り返し与え、はがれ、亀裂、充填剤の漏れなどの疲労的破壊が現れるかを調べる試験です。
一般的には、温度変化は毎分1~5℃と穏やかで、放置時間は10分~3時間程度を希望のサイクル数にて行う試験です。
温度急変試験(温度サイクル試験)
定速温度変化試験と同様に高温と低温を交互にさらしますが、その温度変化を急激に行うことで、定速温度変化試験と同様のストレスに加え、急激な温度変化により構成要素ごとの熱容量や熱時定数の違いによるストレスも加えることが出来ます。
指定の温度変化、放置時間で希望のサイクル数を行う試験です。
SANKO Test Labのメリット(他の受託試験と比較)
- 地球温暖化防止への貢献
⇒ 試験はグリーン電力100%で実施 - 臨機応変に対応
⇒ 試験期間内であれば、試験条件の変更等が可能 - 供試品の受渡しが簡単
⇒ 三弘が指定場所に行きます(愛知県内) - 試験立会が容易
⇒ 刈谷にあるので移動時間を削減可能
Sanko Test Lab 住所
エスペック(株)刈谷試験所内
〒448-0034 愛知県刈谷市神明町1-3
Sanko Test Lab活用について
- 開発工数の逼迫
標準化された試験のアウトソーシング化
評価期間短縮のため、試験条件の見直しが必要
そのための基礎データ取得 - 温室効果ガスの削減対応(2030年46%削減)
試験はグリーン電力100%
使用エネルギー削減のため、試験条件の見直しが必要
そのための基礎データ取得
Sanko Test Lab 連絡先
・亀谷(カメヤ)
Mobile : 080-1576-8183
E-mail : kameya@sanko-web.co.jp
・後呂(ウシロ)
Mobile : 080-9583-4431
E-mail : manabu.ushiro@sanko-web.co.jp
試験可能な装置について
試験可能な装置は下記の3つです。
※ご依頼状況にて、台数追加も相談できます。
※SANKO Test Lab内の装置で対応困難な場合(台数不足など)は、エスペック試験所の装置にて試験を対応してもらえます。
冷熱衝撃装置
試験装置 | 冷熱衝撃装置 |
メーカー | エスペック |
型式 | TSA-203ES-W |
性能 | 高温:60℃~200℃ 低温:-70℃~0℃ |
内寸 | 650×460×670 |
台数 | 13台 |
恒温恒湿器
試験装置 | 恒温恒湿器 |
メーカー | エスペック |
型式 | PL-3J |
性能 | 温度:-40~150℃ 湿度:20~98%RH |
内寸 | 600×850×800 |
台数 | 4台 |
試験装置 | 恒温恒湿器 |
メーカー | エスペック |
型式 | PL-4KPH |
性能 | 温度-40~150℃ 湿度:20~98%RH |
内寸 | 1000×1000×800 |
台数 | 1台 |
まとめ
冷熱の衝撃を試験する重要性や、目的についてご紹介しました。
製品を安全に使用するためにも、冷熱衝撃試験(熱衝撃試験)は取り組むべき試験の一つです。
株式会社三弘は、受託試験事業として代行試験「SANKO Test Lab」を行なっています。
そのため、プロの視点で試験を実施できます。
その他の試験についても相談できますので、課題に感じている方や困っている方はまずは相談から始めてみると良いでしょう。