「宇宙ビジネス」という言葉を聞くようになってしばらく経ちますが、具体的な内容を理解している人は多くありません。
宇宙というからには宇宙船を飛ばしたり、宇宙飛行士が宇宙で特殊作業したりする場面を想像しますし、近年では宇宙旅行なども世界で話題になりました。
もちろん、それらも宇宙ビジネスの一環ですが、実際にはもっと身近な地球上での生活において、すでに深く浸透しているビジネスです。
ここでは、気づかないうちに生活を支えている宇宙ビジネスと、衛星データの利活用について解説します。
宇宙ビジネスとは?
宇宙ビジネスという言葉は、宇宙空間を活用するビジネス全般を指します。
宇宙産業は2010年代から急速に市場が拡大し、すでに世界中の民間企業が参入を果たしました。
宇宙ベンチャーと呼ばれる企業の中には、まったく異なる業種から参入した新興勢力も多く、それまでアイディアもなかったような分野で独自サービスを提供して乗せています。
冒頭でも触れた宇宙旅行もそうですし、ロケットを打ち上げた時や衛星を飛ばした時に出るスペースデブリ(宇宙ゴミ)の回収など、産業として成長が期待される分野に及んでいます。
宇宙ビジネスは世界規模でさまざま展開されており、現在多くの投資家が資金投入を行っている分野です。
また、この宇宙ビジネスの一端として注目されているのが、人工衛星で収集できる衛星データです。
衛星データビジネスは宇宙ビジネスの中でも特に期待されている分野で、これまでのように学術研究用途だけでなく、各国で新しいビジネスの創出が始まっています。
衛星データで取得できるのは、陸域・海域・空域の事象や状況です。
もちろん、観測センサーによる条件や制限はありますが、膨大な範囲を周期的に長期観測できるのは人工衛星のみのため、多くの期待が寄せられていると言えるでしょう。
宇宙ビジネスの3つの分野
現在宇宙ビジネスは大きく3つの分野に分けて考えられています。
・製造とインフラ
施設や機器の製造分野です。
ロケットやシャトル、人工衛星、宇宙ステーションなどの開発やメンテナンスを行っています。
・宇宙利用
人工衛星データを活用した分野です。
人工衛星には、人の目に近い光学衛星のほか、電波を飛ばして反射を見るSAR衛星、気象衛星などがあり、幅広いレンジに対応しています。
宇宙空間から地球上のデータを収集し、衛星データだけでなく地上データなど複数のデータを統合的に解析することで、地球環境や経済動向の把握などへ活用が期待されます。
・宇宙探査
人の活動範囲を宇宙空間まで広げるための分野です。
基本的な研究分野ですが、近年急速にビジネス化が進んだ宇宙旅行もここに含まれます。
衛星データの利活用について
残念ながら日本における宇宙ビジネスは世界に比べて発展途上中であり、さまざまな話を聞いても多くの人はピンと来ないというのが実情でしょう。
ただ、そんな中でも宇宙ビジネス衛星データの利活用については、知ればすぐに深く理解することができるはずです。
「衛星データ」というのは、人工衛星から得られるデータ全般のことです。
宇宙空間で得られるデータは多岐にわたり、遠い星々のものだけでなく我々の住む地球のデータも取得することができます。
たとえば、地球の地表面温度などは、地上で観測するより広範囲に正確なデータを取得することができます。
また、データの分類としては、地上から電波に乗せて発信されている情報を収集したものも衛星データに含まれるため、非常に有用で貴重なデータ群と言えるでしょう。
衛星データの応用分野は多岐にわたり、 資産調査・株価予測・保険・物流・不動産などさまざまな分野ですでに活用されています。
たとえば、天地人コンパスに蓄積された膨大な量のデータを解析・分析した情報に、APIからアクセスできるサービスを提供することも可能です。
また、降水量などの気象情報や3Dマップに代表される地形情報、赤外線によって観測される地表面温度などを世界中のあらゆる場所で取得することもできます。
衛星データは単に収集しただけではデータ群のままですが、それを専門家が複合的に分析することで、価値ある情報を導き出せるという点は理解しておきましょう。
あんなはるか彼方の宇宙空間からどんな地上データが収集できるのかと訝しく感じるかもしれませんが、現在は詳細なデータを収集が可能となり、驚くほど精密な分析が可能になりました。
具体的にいえば、現在は衛星画像データの解析により、地中の水道管の漏水調査さえ可能なレベルです。
衛星データは地上で取得するのが難しく、宇宙からの視点ではないと取れない地球のデータであり、それが取れるようになったことで我々の生活はより良く進化しました。
つまり、衛星データ利活用は間違いなく我々の生活を良くするものであり、今後も発展に大いに期待できる分野と言えるでしょう。
衛星データ活用事例
衛星データは我々の生活を多くの場面ですでに支えていますが、どのようなことに使われているか、ほんの一例を挙げてみましょう。
・携帯電話の位置情報サービス
GPSの活用はもはや知らない人はいない時代ですが、現在はより精度が高く幅広いデータを収集できるようになっています。
・自然保護など
衛星技術と地理情報システム(GIS)を組み合わせ、生態系リスクを開示する国際的な枠組みがすでに始まっています。
地球そのものがどのような状況にあるかを把握し、生物多様性を考える取り組みがなされています。
・気候変動リスクの情報開示
環境問題への意識が高まる中、産業界で衛星データ分析による気候変動リスクに関する情報開示を求める動きが広がっています。
衛星データの取得に投資家が期待する理由
近年まで宇宙開発は基本的に国家機密であり、数百億円もの膨大なコストがかかることから、民間企業が乗り出せるようなビジネスではありませんでした。
2005年にアメリカ政府が政策転換を行い、それをきっかけに世界各国で宇宙開発の規制緩和が進みました。
多数の民間企業が宇宙ビジネスに乗り出したことで大幅なコストダウンが可能になり、民間企業は資金調達能力を得て人工衛星やロケットの開発や打ち上げを行う環境が整ってきています。
こうした宇宙開発ベンチャーに多額の資金を投入しているのが世界中の投資家です。
投資家が宇宙ビジネスに注目する理由一概に言えませんが、非常に重要な要素として挙げられているのが地球ビッグデータです。
地球ビッグデータは小型衛星が取得する地球の情報であり、日本では気象観測衛星「ひまわり」のデータがそれにあたります。
これらの衛星データの活用範囲は膨大で、たとえば農作物の管理を宇宙視点で行い、正しい事業計画を立てることも可能です。
漁業では魚群探知機の精度を高め、効率良く漁を行うことも可能となります。
すでに衛星データは我々の既存の生活の質を上げ、新しいビジネスを生み出す可能性も持つことが明確となりました。
投資家たちは芽のあるビジネスに投資するのが専門ですから、新たなビジネスが近い将来急速に発展することを見越して、現在多額の投資を行っていると言えます。
まとめ
日本は現在宇宙ビジネス発展途上国ですが、島国のためロケットの打ち上げに適した場所が多く、すでに高い自動車製造業のスキルを有しているため、伸びしろが非常に大きな国でもあります。
部品や技術の輸出入は法的に難しい状況ではありますが、これからの時代に必須となる衛星データ利活用のため、日本の宇宙ビジネスが発展することは間違いないでしょう。
世界に後れを取っていることは否めませんが、自動車産業で培ったスキルは変わりません。
宇宙ビジネスの一端である気象情報やGPSなど、すでに生活に欠かせないものも多くあり、今後も国内で成長が期待される業界と言えるでしょう。