2022年の終わりに開催されたFIFAワールドカップカタール2022、日本でも大きな盛り上がりを見せました。
日頃サッカーの試合を見ない方やサッカーに詳しくない方も、遅くまで起きていたことや早起きしてテレビやスマホに釘付けになったのではないでしょうか。
そんなワールドカップで注目されたのが、最新の技術の数々です。
その中でも、センサーを搭載したサッカーボールが公式試合に採用されたことが話題を集めました。
いったい何を目的にセンサーが搭載されたのか、その仕組みや試合に貢献した役割などを見ていきましょう。
ワールドカップなど公式試合に欠かせないリアルタイムのゲームデータ
ワールドカップなどサッカーの公式試合をはじめ、野球やテニス、バレーボール、バスケットボールなどあらゆる競技において正確な判定は欠かせません。
サッカーでも、ほかの競技でも主審をはじめ、複数の審判員がいます。
いずれも専門知識と豊富な試合の審判経験を持ったプロフェッショナルですが、人間ですからミスジャッジも起こします。
ミスというより、立っている位置や複数の選手の陰に隠れて、見たくても見えない部分もありますし、ほんの一瞬の出来事を正確に観察することは、どんなに優秀な審判でも難しいことです。
かつては、「審判の言うことは絶対。」や「微妙な時は主審のジャッジに従う。」とされていました。
もっとも、ジャッジを巡って審判に監督や選手が詰め寄ることやチームどうしで大乱闘が起こることもありました。
近年は、人の目視と判断だけでなく、カメラで撮影された映像を見返してのビデオ判定も導入されています。
とはいえ、ビデオも撮影された位置や範囲によっては、微妙な判定を迫られるのです。
結局は、ビデオを見て審判が人間としての感覚的な判断を下すことになります。
こうした状況を現代の技術で是正し、より正確で、選手も監督も審判員も、観戦者やファンもすべての人が納得できるようなジャッジを下そうというのが、センサーなどを用いた方法です。
センサーでボールの位置などをリアルタイムで追跡し、瞬時に分析することで、正しいジャッジを下すことができるようになります。
ビデオ判定は、あくまでも撮影された記録を振り返っての判定でしたが、センサーなどの最新技術を使えば、リアルタイムで瞬時にジャッジが下せるのがメリットです。
試合を止めることや中断させることなく、リズムを崩さずに公式試合を続けることができます。
より公正で公平な審判を行うためにも、リアルタイムのゲームデータは欠かせません。
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ボールトラッキングとは?
ボールトラッキングとは、試合におけるサッカーボールをはじめ、バレーボールやテニスボールなど球技におけるボールの流れを追跡して、リアルタイムで表示させることです。
センサーを搭載したボールをはじめ、位置測位システムを用いて、ボールの正確な位置をリアルタイムで追跡するローカルポジショニングシステム(LPS)という技術や超広帯域センサー(UWB)によるリアルタイムデータ通信などの技術が用いられます。
スタジアムには、選手の手足やボールの位置を把握するために、トラッキングカメラが12台あまり設置されます。
ボールには慣性計測センサーが搭載され、センサーがボールの状態を検知して、データをビデオ判定のオペレーションルームへと送信するという仕組みです。
ボールトラッキングにより、ボール支配率の内訳を細分化することができます。
ボール支配率は、どちらのチームが優勢かを推し図ることやゴールに向けての攻撃力などを図ることが可能です。
また、トラッキングデータとして、選手の走行距離やスプリント数を計測することもできます。
ワールドカップだけでなく、JリーグJ1の公式試合でも、トラッキングデータは計測されており、節ごとのスプリント数のランキングなどが公表されています。
各選手やチームにとって試合の分析や今後の戦略に役立つだけでなく、サッカーファンにとっても興味深く面白いデータです。
コネクテッド ボール テクノロジーとは
FIFAワールドカップカタール2022で公式試合球として使われたのは、コネクテッド ボールというもので、ボールの位置をリアルタイムでキャプチャするテクノロジーが搭載されています。
ボールの位置とスピン量をセンチメートル単位の精度で検出できるIMUという慣性計測装置が内蔵されていて、IMUのモーションセンサーにより、ボールの動きや位置データが収集されます。
500Hzの信号を1秒間に500回も発信して、オペレーションセンターのシステムに送ることができるIoTボールです。
フィールド上のトラッキングカメラやAIと連動し、ボールの位置をセンチメートル単位の高い精度で追跡することができます。
ボールセンサーがもたらす情報
ボールセンサーは、正確なボールの動きのデータを収集し、リアルタイムのデータを数秒でセンターに送信できます。
オフサイドかを判定できる情報をはじめ、不確実なタッチを感知するなど精度の高い情報送信が可能です。
IMUのボールセンサー技術と、位置測位システムのLPS技術が試合中に測定した結果は数秒でビデオ・アシスタント・レフェリーに送信されます。
ボールの位置関係やシュートした時間、選手の手足の位置など送られてきた情報をAIで分析することで、瞬時にオフサイドの判定などが行えます。
AIが自動的に選択されたキックポイントや選手の手足の位置を計算し、自動的にオフサイドかどうかを判定することが可能です。
その結果の通知を受けた人間のビデオアシスタントレフェリーが検証するシステムを半自動オフサイド判定と呼び、FIFAワールドカップカタール2022で採用されました。
検証にかかる時間は数秒程度ですので、基本的に試合を中断させることはありません。
つまり、試合の現場でチェックする主審・副審に加えて、映像をもとに判定を下すビデオアシスタントレフェリーがいる構造です。
ボールセンサーがもたらす情報などを用いながらも、最終判断は人間が行うという仕組みです。
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まとめ
FIFAワールドカップカタール2022では、センサーを搭載したサッカーボールが公式試合に採用されました。
センサーを通じて検知したボールの位置やキックポイント、選手の手足の位置などの情報と、サッカーグラウンドに配置された位置測位システムや複数台のカメラを通じて得られる情報が瞬時に送信されます。
受信した情報をAIが計算し、瞬時にオフサイドかどうかの判定を下して、ビデオアシスタントレフェリーと呼ばれる第三の審判に送ります。
従来の主審、副審にプラスされた人間のビデオアシスタントレフェリーが、映像やAIによる判定をもとにジャッジを下し、主審に伝える仕組みです。
これまでの人間だけによる微妙な判定や時間を要するビデオ判定とは異なり、より正確で、瞬時の判定が下せるのがメリットです。