水質検査をはじめ、土壌検査や食品の検査でPH計を用いる際は、校正を行うことが欠かせません。
理系で毎日のように実験をしてきた方などからすれば、校正をするのは当たり前と習慣づいているかもしれません。
一方、PH計を使うのが初めてといった方は、「校正するなんて面倒」、「いきなり計測したらだめなの?」、「校正不要のPH計が欲しい。」と思うのではないでしょうか。
残念ながら、現在のところ校正が不要のPH計はありません。
この記事ではPH計の校正方法や使い方、校正の重要性などについて解説していきます。
pH計の校正の頻度とタイミング
水質や食品などの正確なpH値を知るには校正が欠かせません。
正確性を担保するためにも、校正の頻度やタイミングは重要です。
もっとも、測定する度に毎回行う必要はありません。
理想は少なくとも1日1回は行うことです。
水質検査に出かける前、業務開始時に必ず行う、食品などのpH調査を実施する前に行うなどです。
特に週に数回や必要に応じてたまに行うだけといった場合は、測定を行う前に必ず行いましょう。
一方、毎日何度も使うので、なるべく手間を省きたいなら、週に1回程度でも構いません。
たとえば、水質検査が仕事で週に5日、1日何度も実施している場合は、週の始まりである月曜の朝に必ず実施するなどのルールを設けましょう。
もちろん、測定値がおかしいと感じたら、すぐに校正を行わなくてはなりません。
この際、標準液の状態にも注意しましょう。
たまにしか測定をせず、校正をする頻度が少ない場合、標準液が劣化して、正確な校正ができないおそれがあるためです。
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pH計の値に誤差が出る原因
pH計の値が明らかにおかしい、同じ鍋で作った料理なのに複数回サンプリングしたら、数値に差が出るなど、誤差が生じている場合、なんらかの影響を受けているおそれがあります。
測定値が上下して安定しない原因としては、温度が一定でないことや液絡部の詰まりや汚れや電極内部液の量の減少、電極の劣化や寿命などが考えられます。
pH測定で適切な温度は25℃前後になりますので、測定にあたり物質を溶解させたばかりの水溶液は温度が安定するまで待ちましょう。
電極の詰まりなら電極の洗浄、電極内部液量の減少なら内部液の交換、電極の劣化や寿命の場合には、電極そのものの交換が必要です。
計測するまでの反応が遅い、測定値が大きく動くといった場合は、電極の汚れや電極の劣化や寿命が考えられます。
電極を電極洗浄液で洗浄するか、劣化している場合は電極の交換が必要です。
pH計の校正を始める前にすべきこと
pH計の校正を始める前に、まずPH計の電極をチェックしましょう。
電極が汚れている場合や劣化が進んでいると校正も正確にできません。
電極のチェックポイントは順に3つです。
電極内部液が不足していないか、電極内部に気泡ができていないか、比較電極内部液の補充口を開けたかを確認しましょう。
電極内部液は蒸発により量が減ることがあるため、長期間使っていなかった場合はもちろん、毎回補充口近くまでしっかり内部液が満たされているかどうかを確認しましょう。
内部液を追加すると電極内に気泡が入ってしまうことがあります。
もし、気泡ができたら、電極を軽く振るなどして気泡を出しましょう。
そして、測定時には内部液の補充口を開けた状態で使います。
補充口が閉まったままでは、水圧がかかり、内部液と試料がうまく接しないためです。
補充口を開ける作業は忘れやすいので、測定前に必ず実施しましょう。
校正をする際は標準液を使いますが、標準液は劣化していませんか。
目に見えて劣化がわからない場合でも、開封後長時間経過している、前回校正に使ったのが数ヶ月前などの場合、劣化が進んでいて正確な校正ができないおそれがあります。
毎日のように校正に利用するなら、大容量のボトルでも良いですが、たまにしか使わないなら小さなボトルや使い切りタイプなどの標準液を用いましょう。
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pH計の校正精度とpH計の校正の重要性
測定したい試料にpH計の電極を入れれば、測定値が表示されます。
ですが、pH計は使用環境や電極の汚れや劣化などにより、測定値にズレが生じることがあります。
常に精度が高い測定ができるよう、校正を行って、ズレを戻してあげることが必要です。
標準液を使用し、標準液の値を基準値として読み込ませるのが、基本の校正作業です。
pHを測定したい試料の精密な値を知るためには、性能のpH計を使うこと、状態の良い電極を用いて精度の高い校正を行うことが必要になります。
そのためには、劣化していない新鮮な標準液を使うこと、測定試料のpH値に応じた適切な標準液を使用することも大切です。
どんなに高価で高性能なpH計を使っても、校正に使用する標準液によって発揮できる能力に差が生じることがあるので、校正の精度は重要です。
標準液は、一度開封すると使用期限内であっても、空気に触れて酸化するなど変質するおそれがあります。
特にpH9以上のアルカリ性の標準液は変質しやすいです。
使い終わったら、すぐにキャップをしっかりと閉めたうえで早めに使い切るか、使い切りタイプなどを用いるようにしましょう。
校正するpHは、試料のpHに近い2点以上で行うのが基本ですが、pH2~pH8などpHの測定範囲が広い場合には、3点のポイントで実施することで、校正の精度を上げることができます。
一般的なケースでは、中性のpH7.01や6.86の標準液と、試料に応じてpH4.01の酸性標準液か、pH10.01や9.18のアルカリ性標準液を用いて、2点校正を行います。
ですが、分析や研究、品質管理などのために高い精度や信頼性が求められる場合や強酸や強塩基の測定を行う場合などは3点校正を行いましょう。
校正の順番に決まりはないので、どの標準液から行っても問題ありません。
たとえば、pH5.5で設計された食品などを測定したい場合、一般的にはpH7.01と4.01の2点校正が行われます。
ですが、精度を高めたいならpH5.00、6.00、7.01の3点校正を行うのがおすすめです。
反応速度も速まり、早期に安定した数値を測定することができます。
校正の精度を上げるには、2点校正より3点校正を行うことがポイントです。
また、できる限り測定試料のpH値に近いポイントで校正することが大切で、これをカスタム校正と呼びます。
PH計によっては、カスタム校正機能を備えたものもありますので、精度を高めたい時は検討してみましょう。
校正方法や標準液の選び方に加え、電極の状態も確認してください。
校正時にpH6.86の中性標準液に電極を入れた際、新品の電極なら5秒~10秒で6.86付近に到達します。
ですが、劣化が進むと30秒以上かかるようになり、一気に上がらず、ジリジリと少しずつ上がるような状態になります。
反応速度が遅くなったら、電極を交換するタイミングです。
おすすめのPH計
アズワン マルチPHメータ 392R
1台でpHをはじめ、温度とORPの測定ができます。
※ORP測定には別売センサー(1-5678-23)が必要です。
測定データの最大値と最小値メモリが表示され、バックライト機能も付いているため、暗い場所でも数値が見えます。
その他にも、データホールド機能やオートパワーオフ機能が搭載されています。
測定範囲は、pH/0~14、ORP/0~2000mV、温度/0~+50℃です。
まとめ
PH計は、使用環境や電極の汚れなどにより、正確な測定ができなくなることがあるため、標準液を用いて校正を行い、ズレを正してあげることが大切です。
毎日のように測定するなら週に1回でも良いですが、たまにしか使わない場合には使用前に1日1回は校正を実施しましょう。
校正の精度を高めるには電極の状態を良好にすること、劣化していない新鮮な標準液を使うこと、できる限り試料のpH値に近いポイントで校正すること、2点校正より3点校正をすることが大切です。