食品メーカーをはじめ、加工食品を開発・製造・販売しているお店や飲食店で新たなメニューを提供する時などに、どのように味を決めていますか。
試作と試食を繰り返し、社員やモニターから意見を聞く、経営幹部や社長に最終判断をもらうなど、何度も同じ人の意見を聞きながら開発するケースが少なくありません。
もっとも、社長がOKを出した商品や社内で評価が高かった商品が消費者や顧客にはウケが悪いケースもあります。
こうした味覚のズレを解決できるのが味覚の数値化です。
どのようなことができるのか見ていきましょう。
勘と経験による商品開発からの脱却の必要性
食品メーカーでの商品開発や飲食店でのメニュー開発は、どのように行われているでしょうか。
多くのケースで開発担当者が何度も試作を繰り返して味を確認し、ほかの社員やモニターに試食をしてもらって意見を聞き、役員クラスの試食会や社長のチェックを通じて商品化につなげていると思います。
ですが、これらはすべて人間の味覚が影響しており、その人の感覚に左右されます。
社長がOKを出した商品や社内でランキングナンバーワンの商品が、味のプロのジャッジでは不合格になることや消費者や顧客にはウケが悪いことも少なくありません。
人の味覚というのは地域の文化や育った家庭をはじめ、日頃の食習慣やライフスタイル、その日の体調や気分にも左右されます。
どれだけ試作を繰り返し、社内や社外のモニタリング調査をしても、最終的には社長の舌にかかっているといった企業やお店も多いのが現実です。
そのため、社長が替わると、商品やメニューの味つけが変わることもあるほどです。
塩辛いものを好む社長に替わると、味つけが濃くなるなど、ジャッジする人の味覚に左右されてしまいます。
今時はこんな味が受けるだろうといった憶測や勘、経験などで商品開発を行っても人の味覚はさまざまです。
あるモニターや消費者は「甘じょっぱくてご飯が進む。」と高い評価をしても、別の人は「塩辛すぎる。」、「甘すぎる。」と評価することもあります。
こうした勘と経験に頼りがちだった商品開発は、時間もコストもかかり、本当においしい商品の開発から遠のくことも少なくありません。
評価担当者や社長が納得するまで、何度も試作と試食を繰り返すので、時間とコストがかかります。
同じメンバーに何度も判定をしてもらうには、忙しいメンバーを集めることや時間を割いてもらう必要があり、なかなか商品開発や製造へのGOサインが出ません。
ライバルに勝つために、早期に新商品を投入したくても、なかなかできないという問題に直面します。
市場のニーズを汲み取り、ビジネスチャンスを逃さないためにも、勘と経験による商品開発からの脱却の必要性が生じています。
データにもとづく味覚の見える化
勘と経験による商品開発からの脱却するには、これまで蓄積されてきた膨大なデータを利用した、味覚センサーなどを用いて味覚の数値化と見える化をすることが一つのカギを握っています。
味覚を数値化することで、これまでのような属人的、主観的な評価ではなく、客観的な評価ができるようになるのがメリットです。
味覚センサーを用いて競合各社の売れ筋商品を計測して自社の商品開発の参考にしたり、開発に活かしたり、自社の試食評価やモニタリングに要していた人的工数の削減ができます。
従来の方法では、評価者による評価のバラつきリスクを抑えるため、なるべく多彩な人に参加してもらったり、ターゲット層となるモニターに商品を配布してアンケート調査をしたり、モニターを集めて試食会を行うなど、多くのコストと時間を要していました。
味覚センサーを導入すれば、こうした評価者やモニターの代替が可能です。
味覚を数値化することで、個々の評価者の味覚や気温や体調、気分などに左右されることがなくなり、最適なレシピの再現性が高まります。
従来は試作や試食を行う評価者は、飲食を控え、お酒やタバコはNG、香水はNG、刺激物はNGなど体調管理などを徹底した状態で慎重に評価を行ってきました。
それでも、その日の体調や気分で評価が変わったり、いくつもの試作品を何度も食べることで味が変わったり、印象が薄れて、評価に差が出ることがありました。
人による味の官能検査は、どうしても再現性が低くなるのが難点です。
膨大なデータなどをもとに数値化できる味覚センサーを用いれば、人による官能検査よりも正確で、安定した評価ができるようになります。
ヒット商品の開発につながる
味覚を客観的に数値化できるようになると、狙った味の開発が短期間かつ低コストでできるようになり、人による官能評価では実現できなかったヒット商品の開発ができるようになります。
数値化によって、ライバル会社や爆発的にヒットしている他社製品と厳密に比較ができるようになることや地域によって異なる食文化や世代によって、変わる嗜好に合わせた商品開発もしやすくなるのがメリットです。
消費者や来店客への提案もしやすくなり、それぞれ異なる味覚に合わせた商品の提案ができ、満足度を高めてヒット商品へとつなげることも可能です。
たとえば、ワインについて甘み、渋み、酸味、果実味を5段階で表示したマップを作成したり、コーヒーを酸味、苦み、甘み、コクなどを評価したマップを提示したり、カレールウやレトルトカレー、店舗で提供するカレーメニューの辛さやコク、味わいのマップを作成して提供するなどが挙げられます。
消費者や来店客が、マップを見て味が可視化されることで、自分好みの味を選びやすくなります。
自分に合った味の商品を最初に選ぶことができれば、そのメーカーやシリーズ、お店の味を気に入ることにつながり、ヒットさせることが可能です。
新商品の開発がスピードアップでき、販売店や消費者に対して商品の特徴や魅力をアピールする客観的データを提示しやすくなります。
商品開発に際して、市場のニーズを知るためにアンケート調査などを実施した際に、コクやキレがあるビールが飲みたいと言われても、なかなか実現するのは難しいものがあります。
メーカーやお店が消費者が求めるものはこれだと提供しても、消費者はこれではないと評価することも少なくありません。
こうした微妙な味の違いを導き出すには、味覚センサーによる数値化が有効です。
味覚センサーの仕組みは、人工的に作られた舌で、味をデジタルで認識して数値で表すというものです。
人間の生体膜を研究して、人間の舌を模した人工の脂質膜を製作し、これを電極に貼り付け、味溶液に浸して電位の変化量で味を感知できるようになっています。
この仕組みにより、塩味、甘み、苦み、酸味、渋み、旨み、コクを人工的かつ客観的に数値化できます。
数値化することで、人が感じ取る微妙な味わいの違いをさまざまな角度から比較することや検証することが可能です。
数値化したデータを、解析アプリケーションなどを通じて、レーダーチャートで表すことや二次元散布図などのグラフで見える化することで、測定結果がよりわかりやすくなり、商品開発やライバル会社との比較、品質管理などに用いることができます。
おすすめの塩分計
佐藤計量器 手持屈折計 SK-200R
- 測定範囲:食塩濃度 0.0~28.0%
- 最小目盛:食塩濃度 0.2%
- 温度補正:自動温度補正付(温度範囲10~30℃)
- 測定できる種類:食塩水、漬物仕込み時の食塩水、海産物洗浄用などの食塩水
目盛りも見やすく、本体も軽量なため使いやすいのが特徴です。
タニタ 塩分計 SO-302
- 測定範囲:0.6 %~1.2 %
- 温度範囲:60℃~80℃
3段階のLEDで表示されます。
電池寿命は1回10秒の使用で、約2000回使用できます。
まとめ
食品メーカーや飲食店などで新たな商品やメニューを開発する場合、これまでは開発部門や社員、モニター、経営幹部などの味覚に頼り、最終的には社長の味覚で決まることが少なくありませんでした。
人の味覚はそれぞれ違うため、誰もがおいしいと感じる味を創り出すのは難しく、社員や幹部の評価が高い商品が必ずしも消費者や来店客にウケるとは限りません。
勘と経験による商品開発から脱却するには、データにもとづく味覚の見える化が必要です。
そのためには、味覚を測るセンサーの利用や膨大なビッグデータを使った分析など、客観的な視点からの開発も検討に値します。