太陽光発電システムに設置されている計測装置は何?
近年、田園風景の中に数多くのソーラーパネルが設置される光景が目立つようになりました。こうした景観の変化は、往時の田舎の面影を薄れさせ、一抹の寂しさを感じる方もいるかもしれません。しかし、日本のエネルギー事情や地球環境問題を考慮すると、再生可能エネルギーの導入は避けて通れない道と言えるでしょう。
身近なソーラーパネルの周辺に目を向けると、計測機器が設置されていることに気づく方も多いと思います。その中でも特に重要なのが日射計です。日射計は、太陽から地球に降り注ぐ日射エネルギーの量を測定する装置で、太陽光発電システムの性能評価や発電量予測に不可欠な役割を果たしています。
今回は、太陽光発電システムで使用される日射計について詳しく解説します。
日射計とは?
日射計は、単位量あたりに到達する太陽放射エネルギーの量、すなわち日射量を測定する装置です。これは、太陽から地球に降り注ぐ光エネルギーの強さを数値化したもので、太陽光発電システムの設計や運用、農業用ハウスなどの温度管理、気象観測など、様々な分野で利用されています。
日射計の役割
日射計は、それぞれの分野で以下のような役割を担っています。
- 太陽光発電システムの設計 : 日射量データに基づいて、設置場所における最適な発電量を予測し、設備や配置などを決定します。
- 気象観測 : 地球温暖化などの気候変動の研究や天気予報など活用されています。
- 農業 : 日射量に応じてハウス内の温度や湿度を管理することで、収穫量や品質の向上に活用されています。
日射計の種類
日射計は、測定する対象によって大きく3種類に分類されます。
- 全天日射計: 太陽からの全ての日射(直達日射と散乱日射の合計)を測定します。
- 直達日射計: 太陽から直接届く直達日射のみを測定します。太陽を追尾する機構を備えているのが特徴です。
- 散乱日射計: 大気によって散乱された光(散乱日射)のみを測定します。
詳しい情報は、下記のサイトをご覧ください。
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全天日射計の原理、種類
太陽光発電システムの付属設備として使用される全天日射計の測定原理について解説します。その測定原理は、大きく3つに分類できます。
- PVセル型 : 太陽電池(PVセル)が受ける光の強さに応じて発生する電流を測定し、その電流値から日射量を算出します。
- フォトダイオード型 : 受光部に光が当たると光電効果によって電流が発生し、その電流値を測定することで日射量を算出します。
微量な光の計測を得意とし、主に工業計測器や医療機器などに使用されています。 - サーモパイル型 : 受光部に太陽光が当たると温度が上昇し、その温度差をサーモパイルで電気信号に変換して日射量を測定します。
太陽光発電システムにおける日射計の役割
太陽光発電システムにおいて、日射量の測定は非常に重要です。日射計は、システムの性能を最大限に引き出し、運用状況を正確に把握するために不可欠な測定器と言えます。ここでは、日射計が果たす役割を解説します。
設置前(計画段階)
- 最適な設置場所の選定 : 日射計で測定したデータに基づいて、日照条件の良い場所を特定し、発電量を最大化するための最適な配置計画を立てます。
- 発電量の予測 : 日射計で測定した実測データにや気象データを基に、発電シミュレーションを行うことで、発電量を予測します。
設置後(運用段階)
- システムの異常検知 : 実際の発電量と日射計のデータを比較することで、発電量が想定よりも低い場合、その原因を特定します。
例えば、パネルや配線の不具合、またはパネルに砂やほこりが付着した場合、発電量が低下します。日射計のデータと発電量データを比較することで、故障箇所の特定や清掃の必要性を判断できます。
太陽光発電システムに最適な日射計
前述の通り、日射計には多くの種類があり、太陽光発電システムに最適なものを選ぶのは簡単ではありません。そこで、費用対効果、設置の容易さ、運用、測定精度の4つの観点から、日射計選びのポイントを解説します。
- 費用 : 売電収入を最大化したい場合や、個人宅で使用する小規模システムを運用する場合、初期費用は重要な検討事項です。
- 設置の容易さ : 個人宅への太陽光発電システムの普及が進み、設置後の運用を個人で行うケースが増えています。そのため、個人でも簡単にDIYで設置できるシンプルな構造の日射計も選択肢の一つです。設置業者にとっても、設置作業の手間が少ないことは重要な要素です。
- 運用の容易さ : 現場に行ってデータを確認する作業は手間がかかり、運用が継続しなくなる原因の一つとなります。スマートフォンやパソコンなどで遠隔からデータを確認できる機能を備えた日射計が望ましいです。
- 測定性能 : ISOなどの規格に準拠している、応答性が高い、精度が高いなど高性能であることは好ましいですが、当然価格が高くなります。システム規模や用途によっては、必ずしも高精度な測定が必要ない場合もあります。
太陽光発電システムに最適な三弘の日射計「PVSS-03」
三弘 PV日射センサー PVSS-03
株式会社三弘が販売するPVSS-03は、豊橋科学技術大学が開発した特許技術を採用した革新的な日射計です。ソーラーパネル(太陽電池)と同じ材料と原理のPVセルを使用している点が最大の特徴で、これにより非常にシンプルな構造と優れたコストパフォーマンスを実現しています。
農業分野でも広く利用されており、ビニールハウス内の日射量をリアルタイムにモニタリングすることで、作物の生育管理に役立てられています。IoT化に取り組む個人農家が、自身で日射量モニタリングシステムを構築し、スマートフォンなどで日射量を手軽に確認しています。
PVセル型日射計を使うメリット
PVセル型日射計は、太陽電池と同じ材料と仕組みで作られているため、太陽光を測る上で以下の2つの大きなメリットがあります。
- ソーラーパネルと同じ波長領域を測定: 太陽光は紫外線、可視光線、近赤外線など、さまざまな波長の光で構成されています。一般的なシリコン系ソーラーパネルは主に可視光線を電気エネルギーに変換します。PVセル型日射計も可視光線に反応するように設計されているため、太陽電池が発電に利用する光と日射計が測定する光が一致し、より実態に近い日射量を測定することができます。
- ソーラーパネルと同じ構造(カバーガラス): 日射計は、測定用センサーを保護するためにカバーガラスで覆われています。このカバーガラスにはドーム型と平板型の2種類があります。太陽光がカバーガラスを通過する際に一部が反射され、この反射率はカバーガラスの形状によって異なります。ソーラーパネルと同じ種類のカバーガラスを使用することで、光の反射による誤差を減らし、より実態に近い高精度な測定が可能になります。
次世代のソーラーパネル、ペロブスカイト太陽電池とは?
注目を集めるペロブスカイト太陽電池
注目を集めるペロブスカイト太陽電池について詳しく解説します。経済産業省は、2040年までにペロブスカイト太陽電池による発電量を原発20基分に相当する20ギガワットまで普及させるという目標を発表しました。これは、ペロブスカイト太陽電池が従来の太陽電池とは異なる革新的な特徴を持っているからです。主な違いは以下の2点です。
地産地消型の発電
ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池とは全く異なる可能性を秘めています。薄くて軽いという特徴を活かし、ビル、工場、個人宅などの屋根や壁面、さらにはガラスの代わりに設置できるため、発電場所の選択肢が大幅に広がりました。これにより、発電した電力をその場で消費する「地産地消」が可能になり、災害時の電力確保や、再生可能エネルギーの普及促進に大きく貢献することが期待されています。
原材料の国産化
従来の太陽電池の製造には、海外からの輸入に頼らざるを得ない資源が多く使用されています。しかし、ペロブスカイト太陽電池の主要な原材料の一つであるヨウ素は、日本が世界トップクラスの生産国です。この豊富な国内資源を活用することで、原材料の調達から製品の生産までを国内で一貫して行うことが可能になり、エネルギー安全保障の観点からも大きなメリットとなります。
ペロブスカイト太陽電池は大きな可能性を秘めていますが、発電効率の向上、耐久性の強化、鉛の代替材料の開発など、いくつかの課題も残されています。また、世界中で研究開発が進められており、国際的な開発競争が激化することが予想されます。
従来の日射計とは異なる新たな要求
ペロブスカイト太陽電池は、その薄さと軽さから、建物やさまざまな構造物に組み込まれることが期待されています。この新しい太陽電池の特性を最大限に活かすためには、従来の日射計にはない以下の機能が求められます。
- 低コスト化 : ペロブスカイト太陽電池の普及に伴い、多数の日射計が必要となります。太陽電池システム全体の費用を抑えるためにも、日射計の低コスト化が求められます
- 小型化 : 様々な場所に設置されることを想定されるので、限られた場所にも設置できるように小型であること求められます。
- 簡単な運用: 誰でも簡単に運用できるスマートフォンやパソコンから遠隔でデータを確認できるように、IoT技術との連携が不可欠です。
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電力計測技術とカーボンニュートラルの関係とは?
カーボンニュートラルというのは、エコ意識の高い方や地球温暖化防止の取り組みを通じてご存知の方も多いと思います。 では、カーボンニュートラルのために電力計測技術が大きく関係していることをご存知でしょうか ...
まとめ
政府はペロブスカイト太陽電池の開発と普及を積極的に推進しており、2040年までに次世代太陽電池で家庭の電力使用量の約1割を賄うことを目標に掲げています。これは、ペロブスカイト太陽電池が従来の太陽電池に比べて軽量でフレキシブルといった特性を持ち、設置場所の自由度が高いため、再生可能エネルギーの導入拡大に大きく貢献すると期待されているからです。
こうした普及を見据え、性能評価や運用管理に用いる計測機器には、低コスト化、小型化に加え、IoT技術を活用した遠隔監視機能などが求められています。
参考URL
IMT Technology GmbH "What makes silicon solar irradiance sensors so exceptional?"
https://imt-technology.com/en/products/pv-reference-cells
ANN サタデーステーション 将来的には原発20基分相当に?国産の“曲がる太陽電池”最前線を取材
https://www.youtube.com/watch?v=I0EiCHzeuDw&t=134s